家中舎シェフの経歴は少し変わっていて、元々グラフックデザイナーであり、ある結婚式場のパンフレットから名刺やポップ、看板、雑誌広告、TVのテロップまで一切のデザイン物を担っていたデザイン会社の代表である。あるアーティストのコンサートから帰ってきて突然「映像が作りたい」と言いだす。PCやビデオカメラがまだクルマ一台買える値段していた頃に今ではスタンダードとなった披露宴の演出として流れる映像をつくり始める。今では披露宴の演出には欠かせない「オープニングムービー」や「生い立ちムービー」などの映像をすでに完成させていた。人気が人気を呼んで製作が追いつかず家に帰れない日は日常茶飯事だった。今から20年も前の話。
その後、フォトスタジオを買い取り運営。多いときには県内外あわせて10社以上の結婚式場とスタジオ契約。現在も家中舎の料理の合間に自ら撮影に出ている。家中舎の写真やパンフレット、WEBサイト全てのビジュアルは彼の作品である。全国から沖縄へ集まるカップルやファミリーを撮影する「沖縄フォトツアー」は10年続くライフワーク。今でも年に5〜6回は沖縄で撮影していて、家中舎の料理皿に沖縄やちむんが多い理由の一つでもある。
古民家を古民家のまま次の世代へと残していく。コレは現代日本においてとても難しい事だ。「古いモノこそが優れている」とは思わない。ただ、やかんで沸かしたお湯で点てる抹茶と窯で沸かした湯で点てた抹茶とでは美味しさが全く違うわけで、日本らしさや和のこころ、無くしてはいけない文化は残していきたい。伝え続けていきたい。
家族との思い出が詰まった家を大切に補修しながら使い続ける欧州とクラッシュアンドビルドの日本とは文化がはまるで違う。「維持」して行くにはそれなりの資本が必要だ。家中舎プロデューサーとしての役割に「武家屋敷に泊まれる宿」「美味しい料理」「文化継承」を掲げた。この地でこれから50年、100年と武家屋敷を残し続けていくために家中舎にしか出来ないことを作り続けること。彼にとっての「フォトスタジオ全盛期」や「全国を巡る旅」、「受け継いだ京料理」はそのベースであり、その礎。口癖は「いつか家中舎の世界デビュー」(笑)。
水口浩仁 KOJI MIZUGUCHI